不動産売却

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任意売却とは?基本やメリット・デメリットについて分かりやすく解説

  • 会社の業績が悪くなってきて、給料やボーナスがカットされた
  • 毎月のローンの支払いが苦しくなってきた
  • 持ち家を競売にかけられるのだけは避けたい

人生には、不慮の事故や失業など、予期せぬ出来事が起こるものです。

しかしどのような状況であっても、住宅ローンは決められた日に返済しなければなりません。

住宅ローンを滞納し続けると、最悪の場合は住んでいる家を競売にかけられ、自宅を手放さなければならない状況に陥ります。

この最悪のリスクを未然に防ぐためにも、早い段階での対処が必要です。

そこで、今回は「任意売却」について解説します。

任意売却とは、住宅ローンが完済していなくても持ち家を市場価格に近い金額で売却できる手続きです。

本記事では、任意売却の概要やメリット・デメリットについて分かりやすく解説します。

この記事を読むことで、「任意売却」の基本的な知識やメリット・デメリットを理解でき、競売を防ぐ方法が分かります。

毎月の住宅ローンの返済が困難な方は、ぜひ最後までご覧ください。

任意売却とは

任意売却とは、住宅ローンの支払いが滞り、返済が困難な方のための不動産の売却手続きです。

住宅ローンが完済していなくても債権者(他人にお金を貸している銀行などの金融機関)の同意を得ることで、持ち家を市場価格に近い金額で売却できます。

そのため、債務者(銀行などの金融機関から融資を受けている側)の意思で手続きを進められるのが特徴です。

ただし、任意売却を進めていくには以下の点に注意する必要があります。

  • 金融機関が設定した抵当権を解除しなければならない
  • 期限が定められているため、その期間内に売却を完了する必要がある
  • 期間内に売却できなければ、競売に持ち掛けられる

抵当権とは、住宅ローンを貸し出す金融機関が借り手の購入する不動産を担保として設定する権利のことを指します。

競売とは

競売とは、住宅ローンの返済が滞った場合に、金融機関が裁判所を通じて不動産を強制的に売却する手続きです。

債務者の意思に関係なく、法的手段で手続きが進められるのが特徴です。

また、売却価格が市場価格の5~7割程度にしかならないため、住宅ローンが完済できず、残債が残るケースもあります。

残債とは、まだ返済していない借入金の残額のことです。

競売の手続きが進むと、自宅の情報がインターネットなどに掲載されるため、プライバシーを保てなくなります。

任意売却と競売の違い

両者は、どちらも住宅ローンの返済が難しい場合に、不動産を売却してローンの返済資金を確保するための手続きです。

しかし、それぞれの内容には特徴があり、大きな違いがあります。

以下にその違いを表にまとめました。

任意売却 競売
売却価格 市場価格に近い金額で売れる 市場価格の5~7割程度にしかならない
手続きの進め方 債権者の同意を得て、債務者の意思で進められる 裁判所を通じて、債務者の意思に関係なく進められる
信用情報 競売に比べて、信用への影響が少ない ブラックリストに載る
周囲への影響 一般の不動産売却と同じ方法で進めるので、周囲にはバレにくい 裁判所による公示があり、周囲に知られるリスクが高い

このように、任意売却の方が債務者にとって心理的負担が少なく、柔軟に進められる手続きであることが分かります。

さらに、市場価格に近い金額で売却できるため、残りの住宅ローンに充てられる金額が高いのもメリットです。

一方で、競売は任意売却に比べて売却価格が低く、裁判所主導で手続きが進められます。

そのため、経済的にも心理的にも負担が大きいためプレッシャーを感じるでしょう。

任意売却と通常売却の違い

任意売却は、通常売却と同様に不動産会社に仲介を依頼し、手続きを行えます。

しかし任意売却は、住宅ローンを滞納してから金融機関との交渉を経て進めるため、通常売却とは目的や前提条件が異なります。

以下に、両者の違いを表にまとめました。

任意売却 通常売却(仲介)
金融機関との関係 売却手続きを進めていくうえで、金融機関の承諾が必要 金融機関との交渉は不要
売却価格 金融機関が決める 所有者が売却価格を決められる
売却のスピード 競売を回避するため、スピーディーに進める必要がある 売主の都合に合わせて進められる

このように、任意売却は通常売却に比べて自由度が低いことが分かります。

金融機関の承諾を得ながら進めるため、通常売却のように売主の意思だけでスムーズに行うことができません。

任意売却はあくまでも競売を回避する手段であるため、時間的な制約がある点も通常売却との大きな違いです。

 

任意売却のメリット

メリット・デメリット

任意売却には、競売に比べて市場価格に近い金額で売却できる可能性があり、信用情報の影響を低く抑えられるなどの特徴があります。

ここでは、任意売却のメリットを具体的に見ていきましょう。

ポイント

  • 市場価格に近い金額で売却できる
  • ローンの滞納が他の人にばれない
  • 残債は分割返済できる
  • 引っ越し費用の援助がある

それぞれ1つずつ解説します。

 

市場価格に近い金額で売却できる

任意売却は、通常の不動産取引と同じ手続きで進めるため、市場価格に近い金額で売却できます。

競売よりも高い金額で売却できるため、残りのローンの返済を少なくできるのが特徴です。

競売では、売却価格が相場の5~7割程度にしかなりませんが、任意売却では市場価格の8~10割の価格で売却できます。

そのため、残りの住宅ローンを完済しやすくなります。

ローンの滞納が他の人にばれない

競売の場合、物件情報がインターネットに掲載されるため、知人や近所の人に事情を知られることがあります。

しかし任意売却では、物件の情報が通常の不動産取引と同じように扱われます。

そのため、住宅ローンの滞納状況を他の人に知られることはありません。

プライバシーを確保しながら手続きを進められるため、精神的な負担を軽減できます。

残債は分割返済できる

任意売却後のローンの残債は、金融機関と相談の上、分割で返済することが可能です。

そもそも任意売却を行う理由は、毎月のローン返済が困難になったためです。

そのため、任意売却が成功したとしても、残債の一括で支払うのは債務者にとって大きな負担になります。

金融機関もこの状況を理解しているため、分割返済に柔軟に応じてくれます。

ただし、ここで注意したいのが、返済額を生活に無理のない範囲に設定することが重要です。

無理な範囲に設定すると、またローンの返済に苦しむことになるからです。

毎月の支出を考慮して、確実に返済できる計画を立てましょう。

 

引っ越し費用の援助がある

任意売却を行う際、金融機関は売主に引っ越しをスムーズに進めてもらうために、引っ越し費用を負担することがあります。

なぜなら、売主が迅速かつ円滑に新しい住居に移ることを促進するためです。

引っ越し費用は、任意売却で得られる売却代金の一部を引っ越し費用として提供する形で支払われることが一般的です。

また、援助してもらえる引っ越し代金の相場は、10万円から20万円と言われています。

しかし、引越し費用の援助はあくまでも債権者の善意で行っているため、義務ではありません。

そのため、必ずしも引っ越し費用を援助してもらえるわけではないので、金融機関での確認が必要です。

 

デメリット

任意売却は、競売よりも高値で売却できたり、残債の分割払いなど柔軟な対応をしてもらえます。

しかし、デメリットもあるため、メリットと併せて理解しておきましょう。

ここでは任意売却のデメリットについて説明します。

ポイント

  • マイホームを失う
  • 手続きが面倒
  • 任意売却不成立のリスク
  • 悪徳業者とのトラブルにあう場合がある

 

マイホームを失う

自分の持ち家を売るため、マイホームを失ってしまいます。

住んでいた年数にもよりますが、マイホームには思い出が詰まっており、手放すときは切ない思いをするでしょう。

また、引越し先にもよりますが、立地によっては通勤や通学が以前よりもスムーズにいかなくなるケースも考えられます。

これまでの環境がすべて変わるため、精神的に不安定になることもあるでしょう。

 

手続きが面倒

任意売却で売却手続きを進めるには、いくつかのステップを踏む必要があります。

その理由は、物件の抵当権の解除や次の買い手を見つける必要があるからです。

これらの手続きは金融機関の承諾や買い手の条件交渉が関係するため、スムーズに進まないことがあります。

そのため、通常の売却に比べて、手続きが面倒で複雑です。

 

任意売却不成立のリスク

任意売却は必ずしも成功するとは限りません。

これは、任意売却には期限が設定されており、その期間内に売却を成立させなければならないためです。

注意すべき点

  • 債権者は、任意売却と同時に競売の手続きも進めている
  • 猶予期間内に買い手が見つからず物件が売れなかった場合、競売にかけられる

任意売却は、まさに時間との戦いです。

競売で物件が落札されるまでに買い手を見つけ、売却が成立させることが成功の条件となります。

 

悪徳業者とのトラブルにあう場合がある

任意売却をサポートする業者の中には悪徳業者も存在するため、注意が必要です。

しかし不動産に関する知識がなければ、悪徳業者であるかどうかを見分けるのは難しいでしょう。

悪徳業者の特徴は以下の通りです。

  • 自分にとって都合の悪い依頼は放置する
  • 不当な金額を請求してくる

売却手続きが完了するまでの間、精神的な余裕がなくなり冷静さを失ってしまうこともあるでしょう。

悪徳業者は相談者のその心理につけこみ、不利な契約を持ち掛けようとしてきます。

このように、お金も時間にも余裕のない売主にとって、悪徳業者と関わることはさらなる負担になりかねません。

こういった被害を回避るするためにも、事前に業者については調べておくことが重要です。

 

任意売却の手続きの流れ

任意売却の手続きの流れは以下のようになっています。

ポイント

  • 金融機関から督促状が届く
  • 事前準備
  • 任意売却の専門家に相談する
  • 金融機関との交渉
  • 売却活動
  • 売却後の対応

金融機関から督促状が届く

毎月のローンが滞っていると、金融機関から督促状が送られてきます。

督促状はハガキや電話で来ることが一般的です。

督促状が届いてから3~6か月放置してしまうと、「期限の利益」が喪失します。

これは、住宅ローンの分割での返済ができなくなることを指します。

督促状が届いたら、すぐに任意売却の専門家に相談しましょう。

事前準備

家を売る前に、現在の残債や売却後の金額がどれくらいになるかを確認しておく必要があります。

売却見込み額は、近隣の類似物件を売却価格を参考にする程度で構いません。

まずは返済計画を見直しを含め、返済を続ける方法がないか金融機関に相談することが先決です。

早めの行動が競売を回避し、任意売却を成功させるためのカギとなるでしょう。

 

任意売却の専門家に相談する

任意売却を得意とする不動産業者に相談し、これからの手続きをスムーズに進めていくことが重要です。

専門家に相談することで、売却の流れや必要な手続きに関する的確なアドバイスをくれます。

しかし悪徳業者も存在するため、以下の点に注意する必要があります。

  • 任意売却に関する知識や経験が豊富かどうか
  • 弁護士や司法書士などの法律の専門家と連携しているかどうか
  • 任意売却のデメリットについてもきちんと説明してくれるかどうか
  • 金融機関とのつながりがあるかどうか

これらの点を踏まえて、悪質な業者に引っかからないように注意しましょう。

また、自分自身も不動産相場に関する情報を確認しておくことが重要です。

焦って判断せず、しっかり情報収集しながら、自分にとって最適な情報を得ることが大切です。

 

金融機関との交渉

専門家に相談した後、次は金融機関に任意売却が可能かどうかを確認する必要があります。

金融機関が設定した抵当権を抹消しない限り、手続きを進めることができないためです。

任意売却を進めるにあたって、抵当権を設定しているすべての債権者の同意が必要になります。

しかし、任意売却後の残債額次第では承諾しないケースもあるため注意が必要です。

売却活動

金融機関との交渉も終え、任意売却が許可されると、売却活動に入ります。

不動産会社は一般の仲介による売却と同様に、買い手を探します。

しかし通常売却とは異なり、猶予期間内に買い手を見つけなければなりません。

猶予期間内に任意売却を成立させなければ、競売にかけられてしまうため、迅速な売却活動が求められます。

また、なかなか売れないケースや買い手から価格交渉があった場合、金融機関に相談が必要です。

売却価格の決定権は金融機関にあるからです。

 

売却後の対応

売却が完了したら、その売却代金を用いて残債を返済します。

しかし売却価格によっては、ローンが完済できないケースもあります。

完済できなくても、残りの額を支払わなければなりません。

売却後のすべきこと

  • 金融機関に相談して、分割返済にしてもらう
  • 無理のない金額に設定する
  • 新しい住居の確保や引越しの準備を進める

任意売却が成立しても、債務者にとって残債額の一括返済は現実的ではありません。

そのため、金融機関と適切に交渉し、無理のない金額での返済を選択することが重要です。

また、新しい生活をスムーズにスタートさせるために、引越し先の確保や生活費の見直しも考慮し、計画的に行動することが大切です。

任意売却が成功するためのポイント

任意売却が成功するためのポイント

任意売却を成功させるためには、3つのポイントがあります。

  • 早い目の相談と準備
  • 適切な価格設定
  • 信用ある専門家の選定

以下に、それぞれ1つずつ解説します。

 

早い目の相談と準備

住宅ローンが払えなくなったら、滞納せずに早い段階で不動産会社に相談しましょう。

滞納を放置すると、最悪の場合は遅延損害金が発生し、最終的には競売にかけられてしまうリスクがあるからです。

競売にかけられると、持ち家を失い、残りの残債の一括返済を命じられます。

また、競売物件として扱われるため、周囲の人に経済状況が知られることになります。

この最悪の事態を回避するためにも、早い段階で任意売却の手続きを進めてることが重要です。

 

適切な価格設定

任意売却の一般的な相場は、通常売却の8~9割の価格が目安です。

市場価格よりも低く設定している理由は、以下の通りです。

  • 任意売却には期限があるため、期間内に買い手を見つけやすくするため
  • 瑕疵(かし)担保責任が免責されるため

瑕疵担保責任とは、売却後に見つかった建物の欠陥(シロアリ被害や雨漏りなど)について、売主が修繕や損害賠償の責任を負うことです。

しかし任意売却では売主は経済的な余裕がないため、特約として瑕疵担保責任が免責されます。

その分、飼い主にとってはリスクが高くなるため、通常価格よりも低く設定している傾向にあります。

また、任意売却には期限があるため、売却を成功させるためには買い手を見つけなければなりません。

買い手が見つからなければ、最終的に競売へと進むことになります。

その事態を回避するためにも、不動産会社に依頼し査定してもらい、適切な価格設定にしてもらう必要があります。

 

信用ある専門家の選定

任意売却をスムーズに進めるためには、信用できる専門家の選定が必須です。

専門家のなかには悪徳業者が存在し、不当な金額を請求される恐れがあるためです。

ただでさえ、時間的にも経済的にも余裕がない状況で、悪徳な業者と関わってしまうとさらなる負担を抱えることになりかねません。

そのため、実績や評判をしっかり確認し、信頼できる専門家を選ぶことが重要です。

 

まとめ

この記事では、任意売却の概要やメリット・デメリットなどについて解説してきました。

住宅ローンの支払いが滞ると、最悪の場合は競売に持ち掛けられます。

しかし任意売却を活用すれば、競売を回避し市場価格に近い金額で売却できるため、残債の負担を減らせます。

また、売却後の借金を分割払いに応じてもらえる可能性があるため、一括返済のプレッシャーを軽減できるのもメリットです。

ただし、任意売却には期限があるため、早めの判断と行動が重要になります。

住宅ローンの支払いが困難で、このままでは競売に進んでしまうかもしれないと不安を感じている方も少なくないでしょう。

この状況から抜け出すためにも、任意売却を検討してみてはいかがでしょうか?

1人で悩まず、早めに専門家や金融機関に相談することで、最適な解決策を見つけられるはずです。

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